1. HOME
  2. 長野青年会議所
  3. 理事長所信

2021年度

長野青年会議所

理事長所信

挑越

~能動者よ、今ふたたび未来への起点となれ~

 今、私たちは歴史の転換点に立っている。人々が美しく心を寄せ合い、文化が生まれ育つという願いを込められた「令和」の時代になってまもなく、世界は未知のウイルスにより翻弄され、見えない敵との戦いが今も続いている。

 戦後、資本主義対社会主義の二極対立構造の後、世界は急速なグローバル化が進み、日本においても、2020東京五輪の招致をきっかけに、2019年には史上最多となる3000万人を超える訪日外国人を迎え、インバウンドによる様々な需要の拡大が日本の景気回復や地方の活性化の手立てになりつつあった。しかし、新型コロナウイルスの世界的蔓延と日本国内での感染拡大により、東京五輪は延期となり、インバウンド需要は前年比マイナス99.9%を記録した。未だ見えぬ新型コロナウイルスの収束に、ウイルスとの共生を行ないながらも国家経済の活性化を図っているが、決定的な打開策を未だ見出だせず、日本の経済は今も混迷を極めている。日本国内を見渡しても、毎年起こる自然災害や戦後最低を記録した出生率、そして超高齢化時代の社会保障問題など課題は山積している。この混沌とした時代に青年会議所が何を成すべきなのか。青年として、現代の責任世代として、未来を生きるものとして、我々が住む地域に影を落とす目の前の課題に果敢に挑戦し、今こそ本気で行動を起こさなければならない。誰かに頼るのではなく、自ら困難を乗り越え、明るく豊かな希望溢れる未来を我々自身の手で創り上げるのだ。今、我々青年の真価が問われている。

民主主義の原則

 長野青年会議所は、創始の時代より好奇心に満ち溢れ、能動的意志をもった会員により構成されてきた。そして各会員が拠出する年会費をもって公益法人として不特定多数の利益となる事業を創出し、明るい豊かなまちの実現を目指しこれまで活動してきた。しかしながら、近年、会員としての当事者意識の希薄化が進み、青年会議所運動に対して強い関心を持たない会員が増えているように感じる。これからも長野青年会議所が地域の未来に向けて指導力開発と社会開発を両輪とし、存在意義を発揮し続けるためには、会員それぞれが青年会議所運動に対して能動的意志を持ち、会員相互で切磋琢磨する機会を大事にしていかなければならない。そして会員個々が持つ能動的意志を組織し、公式の力として運動を推進することで、まちに対するポジティブインパクトを最大化することができるのだ。
 他方で、平成29年に行なわれた長野市長選挙において、投票率は39.29%となり、長野市民の政治離れが顕在化している。今後、混迷を極める時代において、長野市が地方都市としての存在感を発揮し、そこに住まう老若男女の誰もが希望をもって今を生き、活躍することができる社会を実現するためには、市民一人ひとりの権利を地域の未来への責任として行使し、政治への積極的な参加をもって地域の未来を創る当事者としての意識を扶植していかなければならない。市民の主権、そして会員の主権は民主主義の根幹である。それぞれが主権者として政治や組織の運営に対して、その意思を反映させてこそ、我々が望む未来への希望が開かれるはずだ。  無関心こそが悪である。私たちは地域の未来のために強い関心をもって青年会議所運動に臨もう。

社会との接点

 青年会議所運動を通じて明るい豊かなまちの創造を実現する上で、地域社会とのつながりは切り離すことができない。私たちの運動は常に市民と共にあり、青年会議所運動が自己満足であってはならない理由である。そして私たちの運動を最大化するためにも、青年会議所運動へ市民の共感を生み推進を後押しするパブリックリレーションが重要である。的確なパブリックリレーションは相互の関係を良好化し、青年会議所運動の効果を倍増させることができる。インターネットやSNSがスタンダートとなって久しいが、高い倫理観をもって様々なツールと手段を駆使し、地域社会に効果的な情報発信を行なうことで、良好な関係性と信頼される長野青年会議所ブランドを構築していきたい。一滴の運動を大きな波紋へ、我々の運動を最大化してアウトプットしよう。
 そして日本全国に広がる青年会議所のネットワークは出向を通じてより強固なつながりへと進化する。全国の青年会議所の会員と出向を通じて切磋琢磨することは、圏域を超えた幅広い視野をもち、自らのまちをより俯瞰的に捉えることができるようになる。大いなる成長を求め、勇気を持ち出向へと挑戦する会員を、LOMを挙げて応援しよう。

英知の結集

 青年会議所には月に一度開催される例会がある。例会への参加は会員の権利であり義務である。会員それぞれが万難を排し、一同に集う機会を有意義なものとしたい。
 年に12回開催される例会は、当該年度の職務分掌が異なるそれぞれの委員会が担当し設営を行なう。担当する事業分野に対し、高度な研究や調査、考察に裏打ちされた英知を結集し、発表・共有する場であり、そこに集う会員の新たな見地との出会いが期待される。そして各委員会の専門性を大いに発揮し、今後推進する事業や情熱を傾けてきた事業の集大成の場としてほしい。青年の自由な発想で創られた例会には無限の可能性が広がっている。きっと例会に出席する好奇心に満ち溢れた会員は、発表者の様々な思考や意識に触れ、双方にとって新たな価値観を見出し、その機会は会員相互の無形の共有財産として、未来への礎となっていくだろう。そして、青年それぞれが描く未来を広く共有し、毎月行なわれる例会を青年会議所運動の起点として有効に活用しよう。

未来へ

 昨年、突如として猛威を奮った新型コロナウイルスの感染拡大は、私たちの日常や価値観までも変化させ、市民の社会生活や実体経済に大きな影響を与え、今も長野市の活性化に影を落としている。そして、その刹那にも超少子高齢化や極点化が加速し、長野市の静3 かなる有事は様々な影響をもたらしている。今、これまで誰も想像し得なかった未来に立っている。
 内陸の地方都市として、長野市はこれまで長野冬季五輪の開催や善光寺を中心とした門前町、そして自然豊かな観光都市として栄えてきた。その裏には、長野青年会議所の創始の時代より、先達が戦後の混乱期を乗り越え、長野市を襲った幾度の災害や不況にも屈せず、常に前を向き、夢を語り、そして未来へと行動を起こし、このまちを発展させてきた。その結果、長野青年会議所は指導力開発、社会開発のリーディング組織としてのブランドを確立し、青年会議所運動を通じて、明るい豊かなまちの実現に寄与してきた。今こそ、先達から連綿と引き継がれてきた長野青年会議所の真の存在意義を継承し、この困難を乗り越えていかなくてはならない。いつまでもこのまちに人が集い、活気に溢れ、魅力ある地方都市として栄え続けていくために、青年らしい自由で斬新なアイディアを生み出し、今ふたたび、夢や希望が溢れる未来をこの手で描こう。

能動者

JCI Mission、即ち、青年会議所の使命にはこのように書いてある。「To provide development opportunities that empower young people to create positive change ~より良い変化をもたらす力を青年に与えるために 発展・成長の機会を提供すること~」
 一人でも多くの能動的意志をもったリーダーを地域社会へ輩出するために、地域社会を開発する様々な実践過程を通じて個人の発展・成長の機会を提供することが青年会議所の永遠の使命である。会員拡大が青年会議所運動の一丁目一番地と云われる所以である。
 長野青年会議所は近年まで200余名の会員数を誇り、日本国内でも有数の大規模な青年会議所として様々な事業を推進してきた。しかし、ここ数年、会員数の減少が顕著になり、今年度は120余名の会員数となり、これまでの長野青年会議所の事業規模を維持することが困難となっている。言い換えれば、地域社会により良い変化を起こすための投入資源が減少しているということに等しい。会員拡大は長野青年会議所を存続するための、即ち地域社会のさらなる発展のための最重要事項である。
 この時代、誰ひとり、時間や金銭に余裕があり、容易く青年会議所活動に全力で邁進できるものはいない。この逆境の中で、地域を想う人材を発掘し、未来を担うリーダーを育成し、輩出し続けるためにも、時代に即した柔軟な組織改革を行ない、誰もが活躍できる組織環境を構築する必要がある。そして、未来を描き、誰かのために行動できる仲間を一人でも多く増やそう。

希望をつなぐ

 子どもたちはいつの時代もまちの宝であり、未来への希望である。子どもたちの健全な育成はこのまちの未来の原動力となり、いつの日か、我々が創る未来のその先を描いてくれると信じている。子どもたちの豊かな心や生きる力を育てることは未来への投資であり、我々地域の大人の責任である。ひとづくりこそまちづくりの第一歩である。
 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で子どもたちの教育の機会や様々な体験の機会が失われ、他者との関係の中で育まれるべき子どもたちの豊かな人間性や社会性を養う機会が減っている。今こそ、家庭、学校、地域が三位一体となって子どもたちの豊かな心を育む健全な育成を推進する必要があると強く感じる。子どもたちが幼少期に様々な体験を得て、夢や希望を描き、豊かな想像力と主体性を持ち、社会との関係の中で自己実現や夢の実現へと挑戦する力を育みたい。また、コロナ禍の時代に生活におけるITやICTの活用が飛躍的に進み、今後、これらが様々な分野で基盤として組み込まれていくことが予想される。子どもたちが社会変容の先に来るニューノーマル時代をポジティブに生き抜く力を培い、次代のリーダーへと成長し、長野市の未来を担ってほしい。

ダイバーシティ社会

 先達が連綿とつないできた国際交流事業や長野冬季五輪、ASPAC長野大会の開催などにより、長野市においてもグローバル化が進み、世界をより身近に感じることができる時代になった。近年では、県内観光の玄関口として一年を通じて多くの外国人が訪れるようになるとともに、企業では新たな人材として外国人労働者の雇用なども推進され、新型コロナウイルスによる世界の分断は、長野市の国際化が花開こうとした矢先の出来事であったと感じる。
 一方で、日本国内を見渡すと、SNSの普及により、価値観やライフスタイル、人間関係の多様化が急速に進展するとともに、加速する少子高齢化社会の環境変化に順応するため、あらゆる場で多様な価値観を持った誰もが活躍できる一億総活躍社会の実現に向けて、社会的包摂が推進されている。
 長野青年会議所ではこれまでOMOIYARIの精神が掲げる世界平和の実現を目指し、多文化や個性の違い、そして多様な価値観を受け入れ、生かすことで世界との交流を深めてきた。肌の色や文化、互いの思想や価値観が異なっても、他を尊重し、思いやり、友情を育むことで、暴力や偏見、差別のない自由で豊かな世界の実現を目指してきた。すなわち、言い換えればOMOIYARIの精神により社会的包摂が推進され、世界平和へとつながるのだ。
 新型コロナウイルスの感染拡大により海外との相互理解の機会が制限され、日本国内においても感染者への偏見や差別が生ずるなど、世界平和の実現や社会的包摂の推進に影を落としている。しかし、我々が目指す世界平和の実現のための交流の機会は閉ざしてはならない。青年会議所が持つJCIのネットワークやWEBコミュニケーションを最大限に活用し、誰もが活躍する新しい世界への扉を開こう。みんなちがって、みんないい。そして、まだ世界はつながっている。

地域の魅力

 観光資源が豊富にある長野市にとって、観光産業が経済へ与える影響は多大である。新型コロナウイルスの感染拡大による地域経済への影響は大きく、今もなお、感染拡大予防と経済循環の非両立というジレンマに陥っており、その収束は未だ見えていない。しかし、いつ収束するかわからないコロナウイルスに屈することなく地域内での経済の循環を活性化し、地域社会を持続的に発展させていかなくてはならない。コンパクトな観光需要が当面の主流となっていくならば、我々の足元に眠る様々な地域資源の魅力を再発掘し、地産地消による地域内の経済循環を推進したい。
 一方で、地方の衰退の一因となっていた人口の首都圏への一極集中が、突如訪れた社会変容により変化の兆しが見えている。新型コロナウイルスの感染拡大で東京に人口や企業が集中するリスクが問題視されるとともに、テレワーク化が加速したことにより、日本中、いや世界中のどの場所にいても仕事をすることができる時代が到来している。長野市は首都圏との良好な位置関係にありながら見渡す限りの風光明媚な大自然が広がっており、都市と自然が融合するハイブリッドな生活を送ることができる。サンフランシスコのシリコンバレーのように、クリエイティブなライフスタイルを叶える移住先として提案し、長野市の経済の活性化への活路を見出したい。
2015年に発表された2040年の人口推計の値は衝撃的なものであった。2040年に長野市の人口が約30万人となることが推計され、市域の約7割の面積を占める中山間地域はほぼ消滅する可能性が示唆された。このコロナ禍で起きた社会変容を逆手に取り、今一度、長野市の可能性を発揮しよう。

平和の願い

 長野灯明まつりは冬季五輪を記念し、五輪の精神である「平和」への祈りをテーマに善光寺門前を暖かな灯りで彩る冬の祭りとして開催されてきた。長年に亘り開催されてきたことにより、今では冬の風物詩として、県外からの観光客や、地域の大人から子どもまで、多くの人々が毎年の開催を楽しみにしてくれている。本年、第十八回を数える長野灯明まつりが、新型コロナウイルスの蔓延により閉塞感が漂い、疲弊した人々の心をそっと癒やし、平和の灯をともす心あたたまる一時を提供する祭りにしたい。
 しかしながら、第十八回長野灯明まつりでは、コロナ禍における安全で確実な開催方法の検討が必要である。来場するお客様に安心して参加していただく方法を第一に考えなくてはならない。また、今後の長野灯明まつりの継続開催には財政面や運営面で多くの課題を残していることも事実である。多くの人々が毎年の開催を楽しみにしている祭りであるからこそ、様々な課題に真摯に目を向け、解決に向けて本気で取り組まなくてはならない。
 長野冬季五輪のオリンピックレガシーを、長野市が誇る平和を願う冬の祭典として未来へとつないでいきたい。

人々の願い

 日本に古来より伝わる祭りには様々な願いが込められていた。夏に行なわれる祭りには、神を祀り、魔を封じ、まちを清める疫病退散という願いが込められていたという。史料によると元禄時代以前から行なわれてきた善光寺門前・弥栄神社のながの祇園祭御祭礼屋台巡行も、夏の流行り病を鎮めるために開催されてきたと言い伝えられている。そして1960年代に起こった松代群発地震により、ながの祇園祭が中断したことを受け、長野青年会議所が中心となり「市民総和楽・総参加」の理念のもと長野びんずるをスタートさせた。そして毎年何万人もの市民がその日を楽しみに今では市民祭としての地位を確立している。何百年もの間、祭りは日本人の精神性にある“ハレ”の概念の象徴として、日常を生きる活力としてきたことがよくわかる。今こそ本来の祭りの意味を取り戻し、人々の願いを昇華させ、平和や豊かさを感じ、まちを明るく元気にする長野市の“ハレ”の日を市民に届けよう。

持続可能な世界

2015年、国連はMDGsに続く2030年を目標としたSDGs、持続可能な開発目標を定めた。それまでのMDGsとは異なり、SDGsでは先進国を対象として含める普遍性と、誰一人取り残さない包摂性を兼ね備えた世界共通の開発目標として、先進国である日本においても様々な分野での活動が現在推進されている。長野青年会議所においても2019年から積極的に取り組み、市民一人ひとりの認知を目指し地域社会への普及活動や各種事業への紐付けによる可視化を図るなど、活動を展開してきた。長野県内ではSDGs推進企業登録制度が創設され、企業の経営戦略としてSDGsの活用を図るなど、2015年の採択以来、SDGsが幅広く浸透し活動が加速していることが伺える。
 15年にわたる開発への取り組みのうち5年間が経過した今、認知を目的とした普及活動のステージから行動のステージへとシフトする必要がある。元来、青年会議所運動は持続可能で豊かな社会を目指す事業が多く、SDGsという世界共通の開発目標が定めるゴールに合致している公益性の高い事業が数多くある。今こそ、長野青年会議所がHUBとなりSDGsという共通言語を通じて、様々な活動を行なう企業や団体、個人を巻き込み、我々の運動を推進するチャンスである。SDGsを目指し、そして活用し、我々の運動を最大化しよう。

結びに

 今から約150年前、日本の若者たちが未来を描き、命を賭して行動し、明治維新を成し遂げた。約260年間続いた江戸時代が終焉し、ここから近代日本の幕開けが始まった。私は歴史書をあまり読まないが、この時代に生きた若者の代名詞とも言える坂本龍馬に関する本は何冊か読んだことがある。現在の私より10歳以上も年下の若者が、国を憂い新国家の創造に向けて奔走するそのスケールと生き様に憧れを感じた。当時を生きた若者たちがこれほどまでに未来志向であった理由はなんだろうか。きっと日本の未だ見ぬ未来を描き、信じ、そして自ら創り上げようという、そこには確固たる意志と覚悟があったのだろうと推測する。今、我々にはどれだけの意志と覚悟があるだろうか。己に問いたい。
 2012年に入会し、これまでの一年一年を振り返ると葛藤の連続であった。単年度を繰り返しながらも新陳代謝を繰り返す、長野青年会議所で過ごしたこの数年間、先輩たちのひたむきな情熱に魅せられ、新たな価値観に触れ、未だ見ぬものを見たいという好奇心から我武者羅に突き進みながらも、何度も困難や苦労に直面してきた。しかし、その困難や苦労を幾度も乗り越えることで、自己成長の機会として自身の価値観のアップデートや思考力の向上が得られ、その課程において生涯の友を得ることができた。
 私は先輩達から受け継いできたこの長野青年会議所という存在を長野市になくてはならない魅力ある組織として後世にもつないでいきたい。そして、この先も長野市を牽引するリーダーを輩出する団体としてその存在意義を高めたい。その先に、長野青年会議所の門をくぐった能動者たちが未来永劫、輪廻のごとく長野市を常に豊かなまちとしてつないでいくのである。
 突如訪れたパンデミックという歴史的転換点に立ちながらも、この困難に果敢に挑戦し、乗り越えてこそ、我々が次代のリーダーとして地域を牽引していく。

能動者よ、今ふたたび未来への起点となれ

公益社団法人長野青年会議所
第68代理事長 百瀬 衛